News Release
第3回オンキヨー点字作文コンクール [国内の部 入選作品]


◎最優秀オーツキ賞 正賞 20万円とオンキヨーステレオ・ラクラクキット付き
 「人生に音色あり」 大阪府 古川稔(ふるかわみのる)さん (64)
◎優秀賞 正賞 10万円とオンキヨーステレオ・ラクラクキット付き
 「ここまでになった点字書」 京都府 岩本信子(いわもとのぶこ)さん (63)
◎佳作(3編)   正賞 5万円とCD券2万円分
 「コーラス」 千葉県 佐々木佳代子(ささきかよこ)さん (48)
 「きらめく瞳に会いたくて」 熊本県 坂本高広(さかもとたかひろ)さん (54)
 「歩きながら考えてきたこと」 東京都 宮昭夫(みやあきお)さん (60)
◎特別賞(1編) 正賞 オンキヨーステレオ・ラクラクキット付き
 「はじめてのフルート」 福井県 木原裕恵(きはらひろえ)さん (14)

国内の部 表彰式および平田ルミさんの特別寄稿はこちら→
http://www2.onkyo.com/jp/what/news.nsf/view/2005_tenji_hyosyo

入選作品は、作品タイトルのリンクからご覧いただけます。
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審査会の様子

選評「それぞれの自己像」 作家・藤本義一氏


藤本義一氏
 最終選考に残った作品は、いずれも優劣つけがたいものです。それは、投稿者の全ての方が異なった環境の中で自身の心情を語っておられるからです。点字という太陽をどう受けているかは、環境、性別、年齢、職業によって、それぞれ違うものになります。
 今回の最優秀作は『人生に音色あり』の古川稔さんに決定しました。13歳の時に一瞬にして光を失った古川さんは、映画『シェーン』を観る楽しみを胸にした映画少年でした。それがスクリーンから切り離されてしまったのです。
 私自身、学生の頃に『シェーン』を観て、ラストシーンの切なさも深く感じただけに、古川さんとあの映像の中の少年の像が重なりました。
 −− シェーン、カム・バック!
 少年が発する最後の台詞が思い出されます。が、古川さんは『シェーン』の代表観客だといえるでしょう。実際には観ていない古川さんは誰よりも『シェーン』を観ているのだと思いました。テーマ曲を耳にしながらトランペットは黄色、フルートは銀色、ピアノの高音が光る露という音の色を独自の感性で掴んだ素晴らしさを宿したのです。奥さんの献身も娘さんとの交流も短い文章の中に光っています。そこには日本人が失いつつある家族の情景がくっきりと認められます。
 優秀作の岩本信子さんの「ここまでになった点字書」は、最年少芥川賞作家2人の作品の点字本を3日間で読了する“情熱”に圧倒されました。岩本さんが点字本を読んだ後に、家族が読んで意見を交換するという爽やかさに、古川さんの作品同様、現在の日本で、忘れがちになる家族像が正しく組み立てられているのを感じました。
 佳作の佐々木佳代子さんの『コーラス』の文章表現は抜群です。テンポとリズムが見事に文章のコントラクション(構成)と合っています。文章の起伏を見事に表現しているのが嬉しく、また楽しく思いました。
 対極的なのが宮昭夫さんの『歩きながら考えたこと』です。白い杖で人生を究めていく苦しさと、それに増しての自信と自負が文章の行間から伝わってきます。強靭な精神が読みとられ、深く感じました。
 坂本高弘さんの『きらめく瞳に会いたくて』は無限のやさしさが伝わってくる作品です。次第に純真な子供の心と同化していく自分を感じる坂本さんの心の移行が素晴らしいと思いました。


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