オンキヨー世界点字作文コンクール ONKYO WORLD BRALLE ESSAY CONTEST


アジア・太平洋地域 ジュニア・グループ 優秀賞
「音楽の魔法、それが意味するもの」
マレーシア ロー・ウィー・ハン(15歳・女性)
音楽とは何でしょうか。それは考えや感情を表現する、音の芸術です。音楽は大なり小なり、すべての人にとって、人生の一部です。私たちの静かな心に響く、大きな音です。言葉にできないとき、音楽は語ります。音楽は嘘をつけません。人の率直で、隠れた感情を表すからです。
私にもかつて視力がありましたが、残念ながら、人生は私の思い通りには行かず、神は私から視力を奪いました。それ以来、私の世界は一変しました。まるで運命のいたずらのように、すべてのことが使命となり、徐々に私の気持ちは落ち込みました。面子を保つため、人との付き合いを避けようとしました。しかし、月日が経つにつれ、音楽が障害を乗り越える助けになることを、発見したのです。
私はアルマ中学校から、セント・ジョージ女学校へと転校しました。人見知りする性格でしたが、すぐに人と打ち解けるようになりました。この学校は、勉強だけでなく、音楽にも力を入れていました。友人の多くは、楽器を弾くことができ、楽団に所属していました。先生の中にも楽器を弾ける人がいて、先生や友人から、大いに刺激を受けました。先生のひとり、ヤップ先生はギターを弾くことができ、ある日先生の弾くギターに合わせて歌うよう、私たちに呼びかけました。その日以来、私はギターに興味を持つようになり、自分でも弾いてみるようになりました。
ギターを学ぼうと、いくつかのセンターも訪れましたが、障害のある私を受け入れる自信がないと言われることが多く、たいていの場合レッスンを断られていました。しかし、遂に先生を見つけることができたのです。先生自身も、私と同じ障害がありました。何度も断られたあとで、ようやく先生を見つけることができて、とても嬉しかったです。思いがけず、私のギターの腕前は上達し、再び自信を取り戻しました。ギターを弾くことは、私の生活の一部になり、弾くたびに、周囲の期待やストレス、苦しみから解放された、自分の世界の中にいるのを感じました。
音楽は鏡のように、私のものの見方を変えました。貧困、人種差別、性差別、いじめなどの問題がある世界に生きていても、音楽がすべての人に語りかけてくれるので、自分は一人でないとわかります。私たちはだれもが、自分の弱さを直視したくないと思っていますが、そのことを自覚し、直そうとすることが大切です。私はいつも、周りの人が自分を侮辱し、期待を押し付けてくると感じていましたが、その思いは、音楽が解決してくれました。
気分を上げるために、私たちには折に触れて音楽が必要です。音楽を聴くたびに、高ぶったった気持ちが、落ち着くこともあります。沈んだ気分を引き上げ、情熱的に何かに取り組むことを教えてくれます。ギターを弾いていると、指が痛くなることもありますが、それだけの価値はあります。指の傷は、痛くてもあきらめなかった証しでもあるのです。
昨年、視覚障害者のための歌唱コンテストがあり、私も歌を練習して参加しました。コンテスト当日、とても緊張していましたが、名前を呼ばれてステージに上がり、全力で歌いました。ステージから降りた時、3位以内に入ることができるとは、想像していませんでしたが、結果はなんと3位でした!天にも昇る気持ちでした!自分を誇りに思い、達成感を得ました。
ピアノを弾き、自分の歌を作曲する、高齢の女性にも会いました。それがきっかけとなり、自分もギターを弾きながら曲を作るようになりました。「先生の日」には、私の先生たちすべてのために、歌を作曲しました。先生方はこの歌を気に入り、私は将来、自分自身の音楽を作曲していきたいと感じています。
音楽は私の人生で重要な役割を果たし、不安や弱さを克服する勇気を与えてくれます。これまで感じたことのないような感情を呼び起こし、自信を与えてくれます。音楽がなければ、現在の私はいないでしょう。悲しみのどん底にあった私は、今、音楽を通して、喜びを見つける能力を手に入れたのです。