オンキヨー世界点字作文コンクール ONKYO WORLD BRALLE ESSAY CONTEST

アジア・太平洋地域 シニア・グループ 優秀賞 「奇跡の光」
ベトナム  ファン・ディン・ヴィエット(38歳・男性)

 私は、他の人と同じように生まれ育ち、成長して仕事を持ちましたが、26歳の時に予期せぬ出来事に見舞われ、化学熱傷により視力を失いました。さらに悪いことに、この事故で私の顔は醜くなり、皆が怖がるようになりました。事故のショックは大きく、この世から消えてしまいたいと思うほどでした。醜い顔となり、視力も失い、無力感にさいなまれ、家族や社会の負担になってしまったと感じました。希望を失ったまま時は過ぎ、30歳になった時、一本の電話がかかってきました。長い間、誰も電話などしてこなかったため、とても驚き、間違い電話ではないかと思いました。しかしそれは、ビンディン省視覚障害者協会のスタッフからのものでした。会話をする間、彼らは私の境遇に同情し、視覚障害者も勉強したり働くことが出来る、と励ましてくれました。私は「視覚障害者のことなどわかるはずがない」と答えましたが、なんとそのスタッフ自身が視覚障害者だったのです。その後何度か、電話と訪問を繰り返すうちに、私はこの状況から抜け出すため、視覚障害者協会に参加することを決心しました。

 初日、びくびくしながら協会に行くと、メンバー全員が温かく迎えてくれました。私ほど説得が難しかった人はいない、とも言われました。点字のクラスに参加した私は、おどおどしてまるで6歳児が初めて登校したかのようでした。同じ障害のある人たちと数日過ごしただけで、私は徐々に人生への愛情を取り戻すことができました。協会のメンバーは私に点字やマッサージの職業訓練をしてくれました。点字を学んだことで、かつてのように本や新聞を読むことができるようになりました。大事なことをメモするときも点字を使い、特にマッサージの勉強には大変役に立ちました。視力を失ったものの、視覚障害者協会と点字のおかげで、私は知識の光を得て、職業スキルと適切な仕事を得ることができました。

 マッサージのコースを良い成績で修了し、明るい未来が開けると思っていましたが、また運命が立ちはだかりました。良いマッサージサービスセンターを紹介され、そこではだれもが安定した収入を得ていましたが、私は例外でした。私の技術を高く評価して下さるお客様もいたのですが、私から施術を受けたいと言う人はほとんどいませんでした。私の変形した顔が怖がられたのです。マスクをして顔を隠しても受け入れてもらえませんでした。私は悲しくなり、再び絶望しました。私の技術を褒めて下さるお客様もいたのですが、ここで働くことを受け入れてくれる人はほとんどいませんでした。マスクをしていても、変形した顔は怖がられ、私は悲しくなって失望しました。形成手術の費用は高く、私には手が届きません。しかし、視覚障害者協会が再び支援の手を差し伸べてくれ、2億ベトナムドンの資金を集めてくれました。協会のスタッフは、ハノイの病院にいた私を見舞うため、何千キロも移動し、辛い手術を受ける間、私を励ましてくれました。見舞いに来るときは、私がリラックスできるようにと、点字の本を忘れずに持ってきてくれました。この貴重な贈り物と、協会スタッフの方々の愛情とご支援に心から感謝しています。ことあるごとに、私は痛みを乗り越え、協会の発展に寄与できる有益な人間になり、他の障害者が学び働く機会を得られるよう、手助けするよう心掛けています。

 現在私は、友人たちと共に、マッサージ施設を共同経営しています。技術の高さが評判となり、私たちの店には、毎月数千人ものお客様が来るようになりました。7人の障害のあるスタッフが、安定した収入を得ています。人生の様々な出来事も経験し、協会の助けで優しい妻と子供との幸せな生活も送っています。我が家で子供たちの笑い声を聞くたびに、ビンディン省視覚障害者協会との出会いを感謝しています。点字と出会い、職業訓練を受けることができましたから。協会がなかったら、今の私はいなかったでしょう。ビンディン省視覚障害者第三回会議において、私は協会の執行委員会メンバーに選出されました。私が生まれ育った場所は山岳地帯で、少数民族の視覚障害者が数多くいます。彼らは点字を学ぶ機会もなく、適切な仕事につくこともできず、厳しい生活を送っています。視覚障害者協会と共に、私は彼らのために、新しい家を建て、点字と言う光を届けたいと思っています。知識のみが、人々に、平等で進歩的、平和な生活をもたらします。

 最近の情報技術の急速な発展に伴い、私はスマートフォンやコンピューターを使って、知識や有益な情報を入手しています。しかし点字は、今も視覚障害者にとっての読み書きの手段であり、何かに置き換えることはできません。視覚障害者が知識の扉を開ける手助けをしてくれるのは点字です。素晴らしい価値を持つ小さな点が、生涯を通して私のような視覚障害者を支えてくれます。それは幸せな生活を築くための、知識のダイヤモンドのようなものなのです。