オンキヨー世界点字作文コンクール ONKYO WORLD BRALLE ESSAY CONTEST


アジア・太平洋地域 ジュニア・グループ 佳作
「今も視覚障害者に点字が重要であるなら、その利用促進のために何をなすべきか 」
オーストラリア エラ・エドワーズ(16歳・女性)
点字は、視覚障害者が読み書きに使う印刷システムだ。1824年にルイ・ブライユによって考案されて以来、生活に欠かせない役割を果たしてきた。教育、状況判断、移動、コミュニケーション、身分証明などのために使われる。しかし、コンピュータ化の現代において、視覚障害者の生活にとって、点字は今も196年前と同様に、重要な役割を果たしているのだろうか。そして、もしそうであるならば、点字の利用を促進するには何をすべきなのだろうか?という疑問が問われてきた。事実は実にシンプルだ。健常者にとって、印刷物は生活に欠かせないし、それは永遠に変わらないだろう。点字も同様だ。我々が自立して有意義な人生を送るため、そして学び続けるためには、基礎的な読み書きのスキルは必須である。そのスキルの習得には、点字が欠かせないのだ。そのため、人として、そして論理的に可能であれば、できるだけ早い段階で、視覚障害者に点字の利用を始めてもらうことが極めて重要だ。視覚障害者の大半が成人だとは言え、目の見えない多くの子供達の教育にも、点字はとても重要だ。生まれてから、目の見える子供の世界は文字にあふれているが、目の見えない子供にはそれがないからだ。あらゆる場所で見かける文字(情報)は、健常者にとっては当たり前だ。でも目の見えない子供には、そういった行く先々での文字情報がまったく入らないので、点字をがんばって探すわけだが、どこにでもあるわけではない。とにかく、こういうわけで、視覚に障害のある子どもには、できるだけ早い時期に点字に導くことが大切だ。
その場合、点字は家のあらゆるところにあることが望ましく、物のラベルにつけて識別できるようにするなど、生活の一部にすることだ。点字本の普及の現状からすると、今や点字図書館で借りるか、本を家から点字翻訳者に送ることによって、健常者の子供と同様に、本を読むことを教えることができる。今では、スクリーンリーダーを使って情報を得ることができるとは言え、健常者にとって印刷物が今でも欠かせないように、我々には指先で読む点字は、他の何にも代えられない。
そのため、視覚に障害のある子どもとその親を支援するプロの人たちは、少なくとも点字の基礎知識を持ち、彼らが必ず点字の関連組織と連絡がとれるように支援することが必要だ。
50歳以降に視力を失う人が、視覚障害者全体の82%を占めている。そういう人は、自立して生活する自信を失っていることがある。見えないことだけでなく、読めなくなったことも一番の喪失だと感じているはずだ。読めないということは、日常生活のすべてに影響するからだ。例えば、移動には、標識、通りの名前、地図などを読むことが必要だし、コンロや洗濯機といった家電品を使うにもボタンのラベルを読むことは欠かせない。買い物に行って、服のサイズや食品をさがすにも、ラベルを読まなければ見つけられない。このように、読むことができなければ、日常生活のほとんどができなくなるのだ。なので、視覚障害者の生活にとって、点字はとても重要だ。しかし、高齢者の多くが、自分の能力への自信を無くしてしまい、点字の習得なんて無理だ、と思っている。なので、視力を失った患者に関わる医療関係者は、できるだけ早く、経験豊富な点字の指導者を紹介することが肝要だ。そうすれば、その後の人生を、読み書きできないまま過ごすよりもずっと早く、効果的に、自分らしい生活を取り戻すことができるのだ。そのような紹介をする際、そのプロの人たちは、点字学習をアシストしてくれる手段や人の情報も教えてあげてほしい。そうでないと、点字の習得をやり遂げられないかもしれないからだ。
オンライン化が進む現在、スクリーンリーダーで読み書きやある程度の識別までできるようになり、視覚障害を持つ子供達の中に、点字を学んだり使ったりしない子どもが増えている。読み書きを音声技術のみに頼っているのだ。しかし、公衆トイレのような場所では文字情報が必要なように、それが目の見えない者にとっては点字であり、スクリーンリーダーでは必要な情報が得られない。スクリーンリーダーの性能がどんなに良くなっても、実際に触って読むことには代えられない。今やスクリーンリーダーが使える電子機器に接続できる点字ノートテイカー(電子辞書)や点字ディスプレーがある。学校の先生、補助教員、家庭訪問教師といった人たちには、さまざまな教育場面でこういった技術を利用することは重要だ。しかし、目の見えない子供達には、ハードコピーの点字とパーキンズブレーラー(点字タイプライター)が、数学や言語学習には絶対に必要だ。その理由は、スクリーンリーダーや再生が可能なディスプレーでは、数学の記号や計算の線が、点字やスクリーン上で正しく表示されないからだ。さらに、試験などの時にもハードコピーの点字を使うことが必要だ。特に読解の試験では、コンピュータの持ち込みが許されないことが多いからだ。そのため、教師や視覚に障害のある子どもの教育に携わる人たちは、点字とその利用に関する知識を持ち、教育に必ず点字を含める必要がある。
点字が考案された当時と同様に、今でも点字は視覚障害者にインパクトを与えて続けていることは明らかだ。日常生活において、読み書きを助け、人生を精一杯生きるためには、絶対必要だ。目が見えても見えなくても、だれにも読み書きを習得する権利がある。今日、点字を獲得するための様々な手段があり、支援する人がいる。そういった支援を受けられるということが知られている限り、点字は視覚障害者の暮らしに、重要な役割を果たし続けることができるのだ。しかし、そのためには、点字の提供や教育を行う組織が、より広く教育啓蒙活動を継続し、点字の利用を促し続けることが肝要だ。