オンキヨー世界点字作文コンクール ONKYO WORLD BRALLE ESSAY CONTEST


2019年11月 1日 第17回オンキヨー世界点字作文コンクール入選作品発表
本年も、世界中から多数の心に響く作品をお送りいただき、ありがとうございました。
最優秀オーツキ賞には、
- 日本国内は、木川 友江さん(東京都 52歳・女性)
- アジア・太平洋地域は、コン・ウェイツェンさん(マレーシア 25歳・女性)
- 西アジア・中央アジア・中東地域は、ユリア・ヤンワチノワさん(キルギス 34歳・女性)
- ヨーロッパ地域は、タマラ・アンドレーワさん(ロシア 88歳・女性)
が選ばれました。おめでとうございます。
オーディオ・ビジュアル機器メーカー「オンキヨー株式会社」と公益財団法人「日本教育科学研究所」、「毎日新聞社 点字毎日」は、人を結ぶぬくもりをより身近に感じておられる視覚障害者の世界に、点字と音の懸け橋をしっかり築きたいという願いから、2003年に「オンキヨー点字作文コンクール」を創設しました。04年からは海外部門も設けて拡大し、11年の第9回からは「オンキヨー世界点字作文コンクール」として毎年実施しています。
第17回を迎えた今年のコンクールは、国内部門のほか、海外部門で、世界盲人連合アジア・太平洋地域協議会(WBUAP、21カ国・地域=日本を除く)、アジア盲人連合(ABU、西アジア・中央アジア・中東地域、23カ国)、ヨーロッパ盲人連合(EBU、ヨーロッパ地域、41カ国)の加盟国を対象に作品を募集。世界的な作文コンクールとして、異文化コミュニケーションの輪を広げ、複雑化する国際社会をつなぐ懸け橋となっております。
さらに2015年からは音楽との融合を考え、国内部門で「作詞賞」を設けました。2014年、視覚障害者の家族、学校や職場、地域で接する方に思いを寄せてもらうため設けた「サポートの部」と合わせ、広く輪が広がることを期しました。本年もこの作詞賞受賞作品に、ボーカリストで作編曲家の徳永暁人さんに曲を作っていただきました。国内、海外の視覚障害者の思いや生き方が、読んでくださるみなさまに伝わり、共に生き、共に奏でる温かいハーモニーが社会に響けばと願っています。
- 国内部門は11月初旬、東京オフィスにて表彰式を開催する予定です。表彰式には、木川さん、宇佐さんの受賞者のほか、作詞賞受賞作に曲をつけていただいたボーカリストで作編曲家の徳永暁人さんが出席され、生の演奏で受賞曲が披露されます。
- 海外部門の表彰式は、入賞各国において行います。
人と人のつながりがもたらす豊かな人生
オンキヨー株式会社 名誉会長
大朏 直人(おおつき なおと)
回を重ねてもなお、皆さんから寄せられる作品を通して、視覚障害者をとりまく様々な環境に新たな驚きや発見があり、作者の皆さんの瑞々しい想いや洞察に深い感動を与えられ勇気づけられています。今回の国内部門では人と人との関わりが人生を豊かに彩る様に感動し、海外部門では受賞者を取り巻く環境について考えさせられました。
国内最優秀オーツキ賞を受賞された木川友江さんの作品には、30年以上も前の中学時代の友人が盲学校の先生になる夢を叶えたとの報せが届き、友人とのかけがえのないつながりが活き活きと描かれ、とても微笑ましい気持ちになる作品でした。
海外WBU-AP(世界盲人連合アジア・太平洋地域協議会)地域最優秀オーツキ賞のコン・ウェイツェン(マレーシア)さんの作品では、「障害は成功への妨げにはならない」という強固な信念の下、次々と高い目標を実現し、さらには障害者を取り巻く環境の改善やコミュニティーの成長のために尽力するコンさんの姿勢に頼もしい思いがいたしました。海外ABU(アジア盲人連合)最優秀オーツキ賞のユリア・ワンノチノワ(キルギス)さんの作品では、デジタル社会の変化がもたらす未来について考察されています。そしてそれはあらゆる人に起こり得る変化であり、それぞれの立場でどう捉えどう対応して行くのかとの問いかけに、私自身も考えさせられました。海外EBU(ヨーロッパ盲人連合)最優秀オーツキ賞のタマラ・アンドレーワ(ロシア)さんの作品は、点字盤が文字通りタマラさんの命を救ったお話しですが、1篇の映画を観終わったような壮大な物語であり、過酷な環境の中でも一時も手離すことのなかった点字盤と人生のつながりに圧倒される思いでした。
国内部門の「作詞賞」は、歌人の松村由利子さんに優秀作3点を選考いただき、作曲いただいた徳永さんにもご協力いただき選考いたしました。大切な人へ思いが届くようにと、一点一点慣れないながらも一生懸命文字を打っている情景が思い浮かびます。とかくメールで簡単に済ませてしまいがちな昨今、宇佐さんが心を込めて書いた手紙を受け取る人は誰だろう、受け取った人は格別に嬉しいだろう、そんな想像も楽しい作品でした。
最後になりましたが、本年も心に響く素晴らしい作品を届けて下さった皆様、心からお礼を申し上げます。そして長年多大なるご支援をいただいております、毎日新聞社様、点字毎日様、参加各国への作品募集や審査・表彰を執り行っていただいたWBU-AP、ABU、EBUの皆様、ならびに各国でご支援いただいた方々に心よりお礼申し上げます。
グローバル化が進む中、さまざまな立場の人々が理解し合って共存する世界を築くこと、平和で思いやりに満ちた日々を未来に向かって築いていくことは、ますます重要で尊いことと感じています。これからも本コンクールがその一助となり、さらに異文化コミュニケーションの交流が拡がることを心より願っています。
受賞作品 AWARDS WINNERS
- 国内部門
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本年度は108編の応募があり、作家の玉岡かおるさんを審査委員長とする選考委員会で審査した結果、以下の応募者が入選されました。(敬称略)
作文 最優秀オーツキ賞:
「かけがえのない出会いをありがとう」
東京都 木川 友江(52歳)
【成人の部】 【学生の部】 【サポートの部】 作詞 - 総評
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作家
玉岡 かおる(たまおか かおる)氏今年もすばらしい作品が出そろった。どの作品も前向きで、現状を嘆くことに明け暮れる作品など一つもない。おかげで選考に苦しんだ。その結果オーツキ賞に輝いたのは木川友江さんの「かけがえのない出会いをありがとう」。視覚障害のある木川さんとの交流を通じ盲学校の先生になった健常者の友人を書いた。日本でもインクルーシブ教育が普及し始め、互いに影響し合う成果が見え始めたということか。友人の夢の成就を喜ぶ素直さに、こうした友情がもっと広がればいいと願わずにはいられない。
成人の部・最優秀作の竹内明美さんの「さくら咲く」は、単独歩行での通学の行き帰りが主題。一種、冒険のようにどきどきして読んだ。佳作の関場理生さんの「初めて劇場をみに行った日のこと」は、視覚障害者が観劇すれば、せりふのないシーンでは何が進行しているのかまったくわからない、という新しい発見をくれた。観劇後に語り合える人がみつかってよかったと胸なで下ろす。それぞれ、健常者にはわからなかった状況をうまく伝えてくれた。
学生の部では、川島健太さんの「はずれてきた鎧」。若者の気負いが伝わり、ご本人の成長が楽しみになる。佳作の大坂ひなたさんの「読書大好き!」はタイトルどおり、読書の楽しさが伝わってくる。どんどん読んで世界を広げてほしい。どちらも点字での応募。
サポートの部では、審査員の意見一致で「もう一度、プロポーズ」。視力を失った妻と二人で走ろうとする夫の姿が、文章のあちこちに浮かんでくる。がんばる妻にもう一度プロポーズ、という優しさが共感を呼んだ。佳作は福田万里子さんの「チャレンジ」。盲学校の教師として教え子に注ぐまなざしがよく伝わった。
多様性の時代と言われるが、自分とは異なる他者と出会い、影響し合い、そしてともに成長することこそが人間本来の姿であろう。この作文コンクールの主旨も、単に視覚障害者に書く楽しみの門戸を開くためだけでなく、入選作品を広く健常者に読んでもらう意味ももつ。幸い、すばらしい作品が選ばれた。ぜひ異なる感性を味わっていただきたい。
- 作詞賞選評
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歌人
松村 由利子(まつむら ゆりこ)氏今回の受賞作「手紙」は、大切な人へ点字で手紙を書く場面と心情が、さわやかに表現された作品です。パソコンやスマートフォンの普及によって、私たちは情報を短時間で得ることにすっかり慣れ、人との関わりもメールやメッセージで済ませるようになりました。「手紙」は、そんな現代でも人を思う心は変わらないことを伝えたところが魅力的です。
音声入力のアプリを使いこなし、メールを書いたり検索したりする視覚障害者も増えました。「普段点字を打たない僕」と書いているこの作者も、多分そんな若者の一人でしょう。しかし、いつも側にいる「あなた」に向け、メールやメッセージではなく、「一文字一文字間違えないように気持ちを込め」点字で書くところに胸を打たれます。どんな手紙だったのだろう、といろいろ想像させる楽しさもあります。
点字を打つという手作業のリアリティーが作品世界に奥行きと膨らみを与えており、点字を打つ「音」に聴き入る繊細な感覚も光ります。時間をかけて一文字ずつ「書く」のは、点字も手書きの文字も同じではないでしょうか。現代人の忘れがちな、確かな手ざわりと生きている実感が表現された詩を、たくさんの人たちと分かち合いたいと思います。
- 入賞おめでとうございます
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オンキヨー株式会社 名誉会長
大朏 直人(おおつき なおと)本年度も、心に響く素晴らしい作品が届けられました。
受賞された皆様に、心よりお祝い申し上げます。最優秀オーツキ賞 木川友江さん 「かけがえのない出会いをありがとう」
生涯を通して大切に思えるご友人に出会うことができ、そして、その出会いと友情がもたらす夢の実現の物語に感動しました。お二人の会話から、仲のいい様子がはっきりと情景として浮かんできました。誰かとの出会いはその人の人生に影響を与え、そして与えるだけではなく、与えられることの大きさを認識され、これからの人生において大切な糧を得られたことは、素晴らしい経験をされたと思います。私自身も周りにいる友人の大切さを改めて認識させられました。これからも、東京と松本という距離を超え、素晴らしい友人関係を築かれることと思います。- 成人の部
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優秀賞 竹内明美さん 「さくら咲く」
新たな一歩を踏み出したときの孤独感―その一歩に大小の差はあるものの、それは誰もが経験するものと思います。孤独の中で出会った温かい励まし。それは大きな勇気や自信をもたらし、竹内さんの心に希望に満ちた春を呼び込みました。たった一言、ひとつの優しさが周囲の環境の感じ方まで色鮮やかなものに変えてくれたことが、「さくら」の表現の変化から伝わってきます。竹内さんの作品には、お母さまをはじめ、様々な方への感謝の気持ちがあふれており、情景を想像すると多くの笑顔が浮かびます。その気持ちが周りに温かな心の輪を広げ、竹内さん自身で環境を変化させてきたことが分かります。これからも竹内さんの心に咲いたさくらは、きっと満開が続くことでしょう。佳作 関場理生さん 「初めて一人で劇をみに行った日のこと」
見える・見えないに関わらず、人間の生き方について考えさせられる作品でした。人は大なり小なり人と関わり、人を頼って生きており、お互い助け合うことで行動(もっと言えば人生)の幅が広がると思います。ただ、自分の性格やプライドが邪魔をしてうまく人を頼れない・・・というシーンは、誰もが体験したことがあるのではないでしょうか。そのことに気付き、ポジティブに「人は一人では生きていけない」と受け入れられる関場さんはとても強い方ですね。またこの作品を読んで改めて、人に頼られることは喜ばしいことだと思いました。そして、私もより周囲の人を頼りにしよう、と思える素敵な作品でした。
- 学生の部
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優秀賞 川嶋健太さん 「はずれてきた鎧」
自分自身と向き合うことの大切さと、向き合ったうえで自身の世界を広げていく難しさを改めて気付かされる作品でした。作品を読み、川嶋さんに感心したのは担任の先生から言われた言葉に対して真正面から向き合い、どのようにすれば狭い世界から一歩踏み出せるのかを考え、それに対する自分なりの答えを導き出されたことです。ご自身が点字を使ってきた経験を活かし、通訳介助者の資格を取得され、将来の夢は視覚障害当事者として支援をしたいと考えておられ、ただ自分の世界を広げるだけではなく、それと同時に他者への支援をしたいという心が芽生えられたことに感心しました。これからもご自身と向き合い、さらに色々な活動に挑戦してください。その挑戦を心より応援しております。特別賞 大坂ひなたさん 「読書大好き!」
大坂さんが、点字を使いながら1冊1冊、次のページへと新たな物語の1文1文を心躍らせながら大切に読み進める姿が容易に目に浮かびました。学年を経るごとに新しい本を読み重ねていき、自分の好みのシリーズに出会うことは、読書好きにとっては人生の幸せそのものだと思います。小学1年生から点字の勉強を始められて、今まで読み続けられたことからも大坂さんは非常に我慢強く努力を続けられる人だと思います。本に限らず、自分にとって「これが一番好きだ」と言えることは、非常に貴重なことです。これからも点字とともに様々なジャンルの本を読み続け、感受性を磨き、知識を得ることで、自信を持って「これが好きだ」と言える豊かな人生を歩まれることを願います。
- サポートの部
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優秀賞 小松崎潤さん 「もう一度、プロポーズ」
献身的にご主人様が奥様を支えられている様子が目前に浮かぶようなエピソードに感動しました。奥様の夢を叶えるために積極的に協力され、お二人で一生懸命に困難に立ち向かおうとする姿は、真の夫婦二人三脚であると思いました。マラソンでの「きずな」というロープを使ってのエスコートがどれだけ相手の感情に思いを馳せないとできない難しいことかということも伝わってきました。ただ、それによって奥様の隣にいつでもいられるから喜びも苦しみも分かち合えるとお考えになられていることに、奥様への純粋な愛情を感じ取ることができました。二度目のプロポーズで奥様が流された涙は、きっとご主人様の弛まぬ努力に導かれて奥様の心に見えてきた未来の光に対する喜びの涙であったのではないでしょうか。佳作 福田万里子さん 「チャレンジ」
亡くなった同級生の分まで生きるというメッセージの通り、周囲に努力を誇示することなく多くの困難を乗り越え、さらに新しいことにチャレンジするK君の姿に勇気をもらいました。「私は彼をサポートしていると言うよりも彼からたくさんのことを学んでいる」と文中にありますが、きっとK君も同様に福田さんから多くのことを学んだと感じているのだろうと思いました。人間は支え、支えられ生きているということが感じられる作文だと思います。私もK君のように「チャレンジ精神」を忘れず、丁寧に人生を歩みたいと感じました。
- 作詞の部
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作詞賞 宇佐亮さん 「手紙」
1文字1文字心を込めて丁寧に点字を打つ様子が思い浮かびました。感謝の気持ちを伝えたい!という強い想いがとても伝わってきます。日頃、私たちはメールなどで簡単に打ててしまう文字ですが、慣れないながらに一生懸命打った文字は気持ちの伝わり方も違うのではないかなと思います。この手紙を受け取った人はとても嬉しいだろうなと想像して温かい気持ちになりました。また、言葉にリズム感もあり、歌にするとどんな感じだろうと楽しくもなりました。きっと宇佐さんの想いは手紙の相手に伝わったと思います。これからもその何気ない笑顔が絶えないことを祈っております。
- 海外の部 アジア・太平洋地域
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世界盲人連合アジア・太平洋地域協議会(WBU-AP)の協力を得て、21カ国によびかけ、8カ国 33編の作品が寄せられました。(敬称略)
- 海外の部 西アジア・中央アジア・中東地域
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ABU(アジア盲人連合)の協力を得て、22カ国によびかけ、11カ国 43編 の作品が寄せられました。(敬称略)
- 海外の部 ヨーロッパ地域
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EBU(ヨーロッパ盲人連合)の協力を得て、42カ国によびかけ、11カ国 28編 の作品が寄せられました。(敬称略)
最優秀オーツキ賞:
「私の救い主」
ロシア タマラ・アンドレーヴァ(88歳)
【シニア・グループ】 優秀賞:
「点字は時代遅れという神話―技術の行き止まり」
ノルウェイ ナン・スナルハイム(41歳)
佳作:
「点字の将来」
スイス アラン・デコペット(66歳)
「点字学習1年目の授業」
スペイン アンヘレス・ラフエンテ・デ・フルトス(59歳)
【ジュニア・グループ】
オンキヨーはラクラクキットを通じてバリアフリーを推進しています。
ラクラクキットは無料で提供しています。
オンキヨーディベロップメント&マニュファクチャリング株式会社は、
点字プリンターを通じてバリアフリーを推進しています。
- 過去の入選作品
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- 第16回
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オンキヨー世界点字作文コンクール入選作品
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- 第15回
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オンキヨー世界点字作文コンクール入選作品
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- 第14回
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オンキヨー世界点字作文コンクール入選作品
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- 第13回
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オンキヨー世界点字作文コンクール入選作品
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- 第12回
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オンキヨー世界点字作文コンクール入選作品
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- 第11回
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オンキヨー世界点字作文コンクール入選作品
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- 第10回
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オンキヨー世界点字作文コンクール入選作品
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- 第8回
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点字作文コンクールの入選作品
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- 第7回
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点字作文コンクールの入選作品
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- 第6回
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点字作文コンクールの入選作品
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- 第5回
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点字作文コンクールの入選作品
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- 第4回
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点字作文コンクールの入選作品
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- 第3回
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点字作文コンクールの入選作品
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- 第2回
-
点字作文コンクールの入選作品
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- 第1回
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点字作文コンクールの入選作品
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- 本件に関するお問合せ先
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オンキヨー株式会社 総務部 点字作文コンクール事務局
TEL:06-6226-7343